実は、遺言は作成しただけで安心はできないこともあるんです。
遺言を作った人の想いを実行する人も定めておかないと、あとから相続人が自由に相続内容を変更することができてしまうことがあるのです。
そこで登場するのが、遺言執行者です。
この人は遺言の内容を相続人に代わって確実に実行する役目の人です。
預金であれば、銀行に対する解約払い戻し手続き、株式であれば、証券会社への株式移管手続きなど、およそ遺言に書かれている内容を粛々と実行するのが仕事です。
各種手続きを相続人に代わって行い、遺言に従って各相続人に遺産を分配する作業をします。
では、そもそも遺言があるのに、本人が亡くなった後、相続人で遺言内容と異なる遺産の分け方、いわゆる遺産分割協議ができるのでしょうか?
実務上は、相続人全員の同意があれば、可能だと言われています。
つまり、遺言者の想いとは別で相続人全員が結託すれば、自由に遺産の分け方を決められるのです。
そこで、遺言執行者が重要な意味を持ってきます。
遺言執行者がいる遺言がある場合、遺言執行者の同意がなければ、勝手に相続人サイドで遺産分割をすることができません。
つまり、遺言執行者が遺言に関する番人になるのです。
相続人が自由に遺産分割ができないようにします。
何のために遺言を書いたのかわからなくなるので、一般の感覚でも当たり前と言えば当たり前ですが、見落としがちな点です。
遺言は、単純に作成するだけなら簡単かもしれません。
しかし、どのような意図で、どのようなものを作るのか。
遺言が無効にならない形式的な要件だけに気をとられて、そこを見誤ると、まったく無意味なものを作ってしまうことになります。
ご注意下さい。
私も、ご依頼を頂き遺言書の作成及び遺言執行者になることがありますが、常に意識している点です。
昨今は遺言に関する情報があふれていますが、自分で作成したものは自己責任になってしまいます。
仕事柄、残念な遺言を後から拝見することもあります。
相続関係のご相談を受けていると、世代間のギャップも常に感じます。
今ご相続を迎える世代の方は、感謝の気持ちをすごく持っている方が多いなと感じます。
戦時中の体験がそうさせるのかもしれません。
何かお金を払ってお願いするにしても、お金を払うからやってもらって当然、という感覚ではなく、単純に誰かに何かをやってもらったことに感謝しているような気がします。
80歳以上の高齢の方から10代の若い方まで、いろいろな相談を受けていると、いやでも感じてしまう点です。
時代の流れですから、今の世代が悪いというわけではありませんが、変わってはいけないことのひとつではある気がします。
遺言に限らず、相続に関する問題は、そういった世代間の感覚の違いが、トラブルの原因のひとつになっていると思います。
合理性や効率、スピードが要求されがちな時代ですが、根詰めていると、周りが見えなくなりますし、視野が狭くなりがちです。
高速道路ばかりを走っていると自分が壊れてしまうかもしれません。たまにはサービスエリアで少し休憩する時間を持てるといいのかもしれませんね。
そういう時間は、きっと無駄ではないと思います。
平成30年1月31日